こころみるものたち

わざはひセッション

西大知郎・平田純也・上田悠人・安食星那

「わざはひ」は、神や妖怪の「しわざ」が「這う」ように世の中に広がっていくことを意味します。社会の混乱の底には物の怪がいるとされ、荒れた川の音や地鳴りの音がその「声」であると伝承されてきたのです。

一方、コロナ禍には明確な音がなく、その代わりに溢れているのは連日報道される感染者数等の「数字」でした。

この作品では、ピアノの黒鍵に番号を振り、感染者数の変化をメロディに変換して音楽を作ります。 その上に、厚生労働省による新型コロナ対策に関する公式文書や、『方丈記』をはじめとする過去の災いを記したテキストの朗読を重ね合わせ、過去から現在まで、災いに直面した社会の「声」を立ち上がらせます。

作品のキーワード、ペンタトニックスケールとは

ペンタトニックスケールとは、1オクターヴから主要な5つの音を抜き出して作る音階の総称です。ペンタトニックスケールから音を選ぶことで、調和した響きを生むことができます。

「わざはひセッション」では、鍵盤上の5つの黒鍵がちょうどA♭マイナーペンタトニックスケールの5音であることに注目し、ド#〜1オクターブ上のソ#の9つの黒鍵にそれぞれ番号を振ることで、新型コロナウイルスの感染者数の推移をメロディに変換しました。

災いにまつわるテキストを重ねる

リーディングに使用した引用テキスト一覧です。
⚪︎鴨長明『方丈記』(1212) 左方郁子訳(PHP研究所)参考
⚪︎アントナン・アルトー『演劇とその分身』(1938) 鈴木創士訳(河出書房)
⚪︎石牟礼道子『はにかみの国』(1974) 「石牟礼道子全詩集」(石風社)より
⚪︎古橋悌二『古橋悌二の新しい人生ーLIFE WITH VIRUSー」(1992) 「メモランダム 古橋悌二」(リトルモア)より
⚪︎厚生労働省『新型コロナウイルス感染症オープンデータ陽性者数』(2021)
⚪︎厚生労働省『新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針』(2020)